れいちぇるのおつまみなブログ

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82年生まれ、キム・ジヨン。彼女の人生は私の人生でもあった。

28歳の冬、恋愛とか結婚とか。

28歳の冬。この人と結婚するんだ。そう信じて疑いもしなかった彼と別れた。別れが受け入れられず「2年も付き合った。ハワイも行った。私は面白いし楽しい。これで結婚しない人は普通じゃない。これは犯罪」と意味不明な理論ぽい何かを並べ、彼を最後まで困らせた(怖)

別れは辛かった。でもそれ以上に、恋愛の出会いから信頼関係構築までの一連のプロセス(外見評価、価値観...)、結婚したことが人生で唯一の自慢みたいな人たちの”女性なんだもん結婚で幸せになれ”の押し付けに心底嫌気がさしていた。「もう恋愛したくない。親戚とか会社の先輩とか外野もうるさい!」と叫びたくなった。

入籍。解放感は持続しない。

時が経ち、恋愛に少しだけ前向きになった時に友人の紹介で今の夫と出会った。タイミングが合ったのかとんとん拍子にことが進み交際5カ月で入籍。恋愛が純粋に楽しめなくなる前に、"好き"が分からなくなる前に夫と出会えたことが嬉しかった。

「やっと恋愛から、外野の雑音から解放された」。夫との出会いと同じくらいその事実が嬉しかった。

でもその解放感は長くは続かなかった。「お子さんは?」、「子供が早いうちはいいよ」。また始まった。今度は妊娠、出産だ。子供は欲しかったが身体への負担、仕事への影響を考えると簡単に今すぐ決断出来ることではなかった。それなのにどうして女性は産んで当たり前、早い方がいいだとか私の人生を勝手に決めるのか。

この先私はずっと”自分にとっての幸せ”と”周囲や社会が考える女性の幸せ”、その二つの幸せの間で板挟みとなり苦しむのだろうか。急に息苦しさを感じ、いつもの気分転換、心の処方箋探しをすべく書店に向かった。そんな時に出会った本が『82年生まれ、キム・ジヨン』だった。

82年生まれ、キム・ジヨン。彼女の人生は私の人生でもあった。

物語は一人の女性キム・ジヨン(ジヨンは韓国の名前で一番多いとされる)が産後鬱を発症した場面から始まり、時系列に彼女の人生が淡々と描かれる。読み進めていくうちにジヨンを他人とは思えぬ自分に気づいた。私は彼女を知っている気がした。「これは私だ。私の人生に酷似している」、気づいた時にはコップから水が溢れるように涙がこぼれ落ちていた。

  • 大学のサークルで男子が女子の外見を勝手に評価すること
  • 仕事を頑張ったら「あんまり調子に乗るな」と上司から説教されたこと
  • 結婚もしていない内から飲み会で『産休はいつ入るの?』と言われたこと
  • 結婚で姓を変えた時どことなく虚しかったこと
  • 「ご飯作ってるの?」と家事は当たり前に私の仕事だと思われたこと

これまでの人生で感じた息苦しさや違和感を思い出した。82年生まれ、キム・ジヨンは一人の女性の人生とともに女性が社会で直面する困難や差別を描いた小説だった。主人公の人物描写(外見や性格)が極端に少なく、物語にも抑揚がない。それ故かジヨンの物語であることを強く意識せずにこれでもかというほど自己投影してしまった。恐らくこれが作者の狙いなのだろう。(表紙が顔の無い女性なのもその意図が反映されてると推測)

女性の苦しさとともにジヨンの母、会社の女性上司、彼女たちがより次世代の女性たちが生きやすいように困難に立ち向かう姿が描かれていたのも印象的であり、これが作者が伝える希望だと感じた。「私が自分の幸せを諦めないこと、社会が勝手に作る”女性はこうあるべき”に立ち向かうことが次世代の女性の幸せにする」そう強く思った。

産後の今読み返して思うこと

「産後読むと読後に感じることが変わるわよ」。母の一言で数年ぶりに先日読み返した。その言葉の通りだった。初めて読んだ時は目にも留めていなかった場面に強く共感を覚えた。そしてこの一節が母親としての苦悩の全てを語っている気がした。

「私も先生になりたかったんだよねえ」

お母さんというものはただもうお母さんなだけだと思っていたキム・ジヨン氏は、お母さんが変なこと言ってると思って笑ってしまった。

『82年生まれ、キム・ジヨン』チョ・ナムジュ

また泣いてしまった。この本は何度読んでも私を泣かせるだろう。お母さんになったら何かを諦めなければならない呪い。仕事もセーブする。趣味は諦める。おしゃれも最小限。そんな呪いは私たちの世代で終わりにしたい。”少しでも次世代の女性が自由に生きれるように、私の幸せは私が選んで私が掴む”。育休から復職直前の今、その思いを再度心に刻んだ。

いったい今が何時代だと思って、そんな腐りきったこと言ってんの?ジヨンはおとなしく、するな、元気出せ、騒げ、出歩け!わかった?』

『82年生まれ、キム・ジヨン』チョ・ナムジュ

そして辛くなったなら思い出すんだ。キムジヨンの母のこの言葉を。(就職が上手くいかない時期に、父が「嫁に行け!」とジヨンに言い、それに対して母が放った言葉)

それでは素敵な週末を。

 

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